労務
2024/09/09
2024年10月から最低賃金が引き上げられます
こんにちは、グロースリンク社会保険労務士法人の織戸と申します。
2024年10月より全国で地域別最低賃金が改定され、全国平均の時給が1,054円と全体的に過去最大の50円引き上げが行われます。今後も年々引き上げられていくことが予想されますが、企業にとってこの変更は、ただ単に賃金体系の見直しを意味するだけでなくビジネス運営全体に影響を及ぼす可能性があります。今回は企業が最低賃金の引上げに効果的に対応するためのステップと最低賃金の計算方法を簡単に紹介したいと思います。
♦そもそも最低賃金とは?
最低賃金法に基づき国が最低賃金を定め、使用者はその最低賃金以上の賃金を支払わなければいけないという制度です。都道府県別に地域別最低賃金が設定されています。
♦企業が行うべき対応ステップ
1⃣最新の最低賃金情報の確認:企業は最新情報を把握し、適用範囲内であることを確認する必要があります。
2⃣賃金体系の見直し:現行の賃金体系を再評価し、最低賃金の引上げに対応するために調整します。これには、直接影響を受ける従業員だけでなく、賃金構造全体のバランスを考慮することが含まれます。
3⃣従業員への通知と説明:賃金の変更は扶養内で働きたいと考える方や、従業員のモチベーションに直接関わるため、変更内容を明確に伝えることが重要です。労働条件通知書なども変更になる従業員もいると思われるので忘れずに対応しましょう。
4⃣人件費の再計算と予算調整:最低賃金の引上げによる人件費増加を見込み、年間の予算計画を見直します。必要に応じて、他の経費削減や効率化の施策を検討することが賢明です。
♦最低賃金の計算方法と注意点
最低賃金を調べる際は、以下の点に注意が必要です。
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地域ごとの最低賃金を見る
各都道府県ごとに異なる最低賃金が設定されています。そのため、具体的な金額を知るには、労働者が勤務している地域の最低賃金を確認する必要があります。
※2024年8月末時点の情報です
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最低賃金の計算対象となる手当の範囲を確認する
計算には実際に支払われる賃金から一部の賃金(割増賃金、固定残業代、精皆勤手当、通勤手当、家族手当など)を除いたものが対象となります。歩合給を導入されている場合などは、別に計算が必要のため特に注意が必要です。
≪時給制の場合≫
現在の時給が地域別最低賃金を下回っていないか確認します。下回っている場合は時給を最低賃金額以上にしましょう。
例えば、愛知県の2023年10月の地域別最低賃金は1,027円でしたが、2024年10月から1,077円に引き上げられます。この場合、自社のパート・アルバイトの時給が1,076円以下の方を確認し、該当する場合は1,077円以上に引き上げなければなりません。
≪日給制の計算方法≫
日給から時給を求める計算式は【日給÷1日の所定労働時間】です。休憩中は時給が発生しないため、労働時間から差し引いて計算する必要があります。また、手当も時給換算する必要があり、賃金と合算して考えます。 その際は、1ヶ月あたりの手当を1ヶ月の平均所定労働時間で割って算出します。
≪月給制の計算方法≫
月給から時給を求める計算式は【月給÷1ヶ月の平均所定労働時間】です。こちらも日給制同様、各種手当の中で最低賃金の対象となるもの・ならないものを選別して計算することが大切です。
また、月給を基にして最低賃金を法令遵守しているかを評価する場合は、【月間の総労働時間×地域の最低時給】です。例えば月間の総労働時間が160時間とし、愛知県の場合2024年10月の地域別最低賃金は1,077円なので 1,077円 × 160時間 = 172,320円とこれが最低月給となります。つまり基本給・対象手当の合計がこれを上回っていれば法令順守しているとなります。
※※業種別最低賃金※※
特定の業種には業種別の最低賃金が設定されていることがあります。該当する業種で働いている場合は、業種別最低賃金も確認する必要があります。
この度の最低賃金の改定について企業が行うべき対応ステップと最低賃金の計算方法を簡単にご説明させていただきました。変更がもたらす影響は多岐にわたりますが、正確な情報をもって適切に対応されることをお勧めいたします。皆様の職場でのさらなる発展と従業員の皆様がより良い労働環境で働けることを心より願っております。最後までお読みいただき、ありがとうございました。