2023/03/26
住宅取得資金贈与特例の注意点
名古屋税務3課の森山です。
たまたま2年連続で住宅取得資金の贈与税申告に関わる機会がありました。住宅取得贈与の特例は一定の要件を満たす場合の住宅取得資金の贈与に対し、贈与税を課さない制度です。この特例活用に際し、私なりの注意点をお話しさせていただければと思います。
まずは住宅取得贈与の特例の概要です。
● 受贈者(もらう側)の要件
(1) 贈与を受けた時に贈与者の直系卑属(子や孫)であること
(2) 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上であること
(3) 贈与を受けた年の年分の所得税に係る合計所得金額が2,000万円以下であること
(家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は、1,000万円以下)
(4) 平成21年分から令和3年分までの贈与税の申告で
「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがないこと
(5) 自己の配偶者、親族などの一定の特別の関係がある人から
住宅用の家屋の取得をしたものではないこと
(6) 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて
住宅用の家屋の新築等をすること
(7) 贈与を受けた時に日本国内に住所を有していること
(8) 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること
● 住宅の要件(新築の場合)
(1) 住宅用の家屋の登記簿上の床面積が40㎡以上240㎡以下であること
(2) 床面積の2分の1以上が受贈者の居住の用に供されるものであること
※上記以外にも要件がございます。詳細は国税庁のウェブページをご確認ください。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm
次にこの特例を活用するにあたっての注意点を列挙します。
● 贈与される財産は金銭に限る
贈与される財産は金銭(現金預金)に限ります。例えば父母が取得した家屋や、先祖代々の土地を子供の住宅用に贈与したとしても、この特例を受けることはできないことになります。
● 納税額がでなくても申告が必要
この特例を受けることにより500万円(耐震、省エネ住宅の場合には1,000万円)までの贈与は非課税になりますが、贈与税の納税額がなくとも申告は必要となります。この点は通常の暦年課税の110万円の非課税枠とは異なります。
● 住宅ローン控除適用時の住宅取得対価の額からは控除する
住宅取得資金贈与と住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)はほとんどの場合、一緒に申告することになるかと思います。住宅ローン控除は年末のローン残高に一定の割合(R4年取得の場合は0.7%)を掛けて税額控除する、という理解で概ね正しいのですが、その上限額の計算は「年末時点の住宅ローン残高」と「住宅の取得対価の額」のいずれか低い方に一定の割合を掛けた金額となります。そして「住宅の取得対価の額」から「住宅取得資金贈与の特例を受けた金額」は控除することとなっています。
例 住宅の価格 4,000万円
住宅ローン残高 4,000万円
住宅資金贈与 500万円
住宅取得対価 4,000万円 - 500万円 = 3,500万円 ①
住宅ローン残高 4,000万円 ②
① < ② ∴ 3,500万円
住宅ローン控除限度額 3,500万円 × 0.7% = 245,000円
この点は過去に誤った申告をした納税者が続出した経緯がございますのでご注意ください。
● 暦年課税制度との併用が可能
通常の暦年贈与と併用することにより、110万円を上乗せした金額まで非課税で贈与することができます。また500万の金銭を400万円は住宅取得資金、100万円は暦年贈与と分けることもできます。こうすることにより、暦年贈与分は上記の住宅ローン控除との併用時に対価の額から控除する必要がなくなります。ただし住宅取得資金贈与の特例を受けた金銭は相続税申告時における持ち戻し計算の対象外となりますので、このあたりの有利不利判断はケースバイケースかと思われます。
大きなメリットがある制度となりますので、マイホームの購入予定がある方はぜひご活用ください!