2016/10/28
成果主義の落とし穴
こんにちは。
労務チームの大村です。
私も社労士という仕事柄、いい人事制度の構築の仕方に魅力を感じます。
たとえば、等級制度、評価制度、報酬制度等、様々な制度があります。
また、働き方一つにしても、ダイバーシティを視野に入れて
ライフステージに合わせた人事制度の構築も必要でしょう。
評価主義というと、年功序列から成果主義への移行を思いつく方が
多いでしょう。
少し前の話になりますが、
パナソニックが成果主義に転換したことが大きなニュースになりました。
成果主義は、年齢に関係なく評価されるという点でいい制度だと思います。
ただ、成果主義にはデメリットもありますので、運用する場合の注意点について
お話します。
1.達成意欲の低下
評価される人がいるということは、一方で評価されなかった人がでてきます。
例えば、10人のうち1人が評価されれば、9人は、評価されないことになります。
結果で評価されるため、
プロセスが結果に結びつかなかった場合は努力は一切評価されません。
プロセスは目に見えない為、評価するのはとても難しいからです。
また、成功しなかった場合、これまでの努力は評価されず、
努力しても評価されなかったという気持ちがモチベーションを下げ、
努力に見合う成果が得られず、達成意欲が低下するおそれがあります。
2.個人主義に走り、チームワークが悪化
評価される人とされない人がいるということは、
評価されるためには、いかにノウハウを蓄積するかがポイントとなります。
そこで同僚や後輩にノウハウを教えることで、相手に成果を上げさせることになり
やがて自分が蹴落とされることになることをおそれ、情報を共有しようとはしません。
結果として、スキルを盗まれないようにスキルを囲い込み流出を防ごうとする
意識が働き、個人主義に走り、せっかく使える有用なスキルがあるのに共有できず、
結果として組織の生産性をあげるという意味で、デメリットになることがあります。
結果、人間関係が希薄になり、連携や交流が悪化するおそれがあります。
3.結果主義になり、モチベーションが阻害
評価されるとうれしいものです。
最初は、仕事に高いモチベーションをもって仕事に取り組んでいても、
成果主義になると、いくらやっていても評価されなければ意味がない
ということになり、やがて、結果を出すことばかりにフォーカスされる
おそれがあります。
エドワード・デシが提唱した「アンダーマイニング効果」によると
内発的に動機づけられた行為に対して、報酬などの外発的動機づけを
行うことで、モチベーションが低下すると言われています。
例えば、自分の子供に「テストで100点取ったら、何でもほしいものを
買ってあげる」と言ったとします。
最初はやる気をもって勉強していたのが、やがて報酬をもらえないと
努力しなくなり学習しなくなるという効果をいいます。
また、組織風土という点でも成果主義への移行は注意が必要です。
外資系企業は、実力主義、個人主義という組織風土が定着しているので
「成果主義」がよく合いますが、
日本の企業は、協調しあう風土である為、
成果主義にはデメリットの方が多いのではないかと思います。
もし今、人事制度を成果主義にされようと思っている場合、
一気に成果主義体系に変えるのではなく、組織風土に合わせて
どの制度がいいか十分検討したうえで、会社にとっても社員にとっても
幸せな制度構築が必要ではないでしょうか。